中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
針治療というと腰痛や肩こりを思い浮かべる方は多いと思いますが、耳鳴りで針治療を思い浮かべる人はまだまだ少ないかも知れません。
眼や耳といった五官の症状も立派な針の治療対象なのです。
中医学では、耳鳴りの病態の一つとして、身体の内側で〝風〟が発生していると捉えることがあります。
例えば、強烈なストレスなどで気の流れが停滞、鬱積すると、滞ったものはやがてエネルギーを持って上に突き上がります。
〝怒髪天を衝く〟といった状況でしょうか。
この鬱積したエネルギーの上衝が〝風〟を伴い、〝ゴーッ〟という音を生じます。
鬱積したものは往々にして熱を発生しやすいのですが、熱を持つとそこには風を発生しやすくなります。炎のまわりの空気がゆらいでいることからもイメージできますね。
若干語弊のある喩えですが、イメージ的には、こうした〝風〟が耳の内側で起こったものが激しい耳鳴りだと考えます。
"海潮音"のようだとも喩えられますが、鬱積したものが押し寄せてくるということでは、これもイメージし易いかも知れません。
このタイプの耳鳴りは、耳を塞いでも軽減せず、耳の閉塞感を伴う場合があります。
環境の変化や強いストレスにさらされたことで気が鬱滞したような場合、あるいは飲食の不摂生で身体の中に食積や痰湿といった余分なものが蓄積している場合などが原因として考えられます。
一方、停滞や鬱積ではなく、不足が原因で生じる耳鳴りもあります。
疲労で気血を消耗し過ぎたり、あるいは胃腸の働きが弱って食事から十分な気血を生成できない場合などに、気血が耳を十分に栄養できないと、やはり耳鳴りを発生し得ると考えます。
また「耳」は「腎の竅」とも言われますが(ちなみに眼は肝の竅、鼻は肺の竅、などなど)、腎は先天のエネルギーを蓄えている臓で、この腎のエネルギーが衰えても耳に影響を及ぼします。
これらの場合の耳鳴りは、本来気血で満たされているべき耳の空間に十分な気血が供給されず、そのために出来た隙間にそよそよと隙間風が吹いている、そんなイメージでしょうか(あくまでイメージです)。
先に述べた何かの鬱滞や熱化で生じるような激しい音の耳鳴りに比べ、どちらかというと、「そよそよ、さわさわ」という低く細く小さい音です。
耳を塞ぐと少し軽減したり、閉塞感よりも耳の中の空虚感を伴ったりします。夜間に悪化しやすいのも特徴でしょうか。
前者を「実証」の耳鳴り、後者を「虚証」の耳鳴りと言いますが、「実証」の場合は、鬱滞・鬱積しているものを取り除き、上衝しているものを引き下げ、「虚証」の場合は、不足を補って気血が耳を十分営養するようにします。
その為、耳の症状ではありますが、耳の周囲だけでなく、耳から遠く離れた手足のツボにも針を打ったりして全身の状態を調えてゆきます。
(※日中友好新聞2016年12月5日号・第2402号に掲載のコラム《針灸治療の勧め③》「耳鳴りは〝風〟の音?」を加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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針灸、マッサージ、中国整体を併設