中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
"不眠症"、"睡眠障害"は、中医学では"不寐"や"失眠"と呼ばれますが、一口に「眠れない」と言っても、その「眠れない」状況は人によって異なります。
〇なかなか寝付けない(入眠困難/入寐困難)という人もいれば、
〇寝つけても眠りが浅い、夢ばかり見ている、頻繁に目が覚め、目覚めた後なかなか再入眠できない(熟睡障害、中途覚醒/寐而不実)という人、
〇或は、もう少し眠りたいのに早く目が覚めてしまう(早朝覚醒/易醒)といった人など、様々なタイプがあります。
もちろん実際にはこれらが混合したケースが大半ですが、
〇重症のものでは一晩中眠れないといった状態になることもあります。
"不眠症"、"睡眠障害"に関しては、現代医学でも、「何時間以上眠っていないと不眠」だという"時間的定義"はありません(細かい診断基準は他を参考にしてください)。
上に列挙したような睡眠状況に加え、本人が「寝足らない」、「熟睡感が無い」と感じ、それに由って、「疲れが取れない/だるい」、「日中眠くなる」、「仕事中に集中力が無くなる」など、「日中の生活や仕事、心身の状態に支障が出ているもの」が「不眠」ということになります。
つまり、実際の睡眠の状況と共に、本人の「よく眠った」或いは「眠れた」という「"感覚"の有無」が一つの、しかし大きな要素となるということです。
では、「よく眠れた」、「眠れている」と"感じる"その本体は何でしょうか?
逆に言えば、「寝不足だ」、「眠れていない」と"感じる"状態とは一体どういった状態なのでしょうか?
中医学的には、"睡眠"は、"心の臓"に宿っていて"こころ"の働きの親玉でもある"神(心神)"が"安らかに休んでいる状態"であると言えます。
つまり「眠れている」、「よく眠れた」という状態とは、"神(心神)"が、速やかに、そして朝まで、"安らかに休めていると感じている"状態であると言えます。
中医学では、"精神(こころ)"と"身体"は一体不可分のものであり、"精神(こころ)"の様々な働きは各々"五臓"に宿っていて、相互に影響し合っていると考えます("精神(こころ)"と"五臓"の関係については過去のコラム2018年1月15日号、2018年2月15日号などを参照)。
具体的な例で説明してみましょう。
例えば、"思い悩む"という"精神(こころ)"の働きは、"脾胃"と関係が深いとされています。もしも"思い悩み過ぎる"ことがあって"脾胃"に負担がかかると、脾胃の消化機能が落ち、血液の生成・補充が不足し、血液の流れも滞って、"心神"に十分な栄養が運ばれなくなる可能性があります。そうなると、お腹を空かせた"心神"は安らぐことが出来なくなり、不眠となります。
また別の例を挙げてみますと、ストレスによる"イライラ"は"肝"に影響しやすい"精神(こころ)"の状態とされています。"イライラ"すると"肝の気"は停滞し、停滞した気はやがて鬱積して熱を生じます。"肝火"と呼ばれるこの熱が下からその上に在る"心の臓"を熱すると、"心神"は熱くて安らぐことが出来ません。その結果、眠れなくなります。
そのほか、過度の疲労や過度の房事なども"先天の元気"を蓄える"腎"に影響することで"心神"にも影響します。
中医学では、拍動する"心の臓"は性質として"火"に属し、泌尿生殖に関わる"腎の臓"は"水"に属するとされ、体の上下で"火"と"水"が互いにバランスを取っています。過労によって"腎の臓"に負担がかかり"腎水"が不足すると、ちょうどラジエータの水が少なくなったエンジンがオーバーヒートするように、心の火がオーバーヒートし、心神が乱れます。これもまた不眠となる原因と考えられます。
また、"腎の臓"は、"精神(こころ)"の働きの中でも"決定実行しようとする意志"を宿しているとされていますので、責任を負ってバリバリ働く人たちの中には、過労に重ねて精神的にも"腎"に負担がかかり、"心"とのバランスを崩して"心神"に影響している人が多いかも知れません。また、"腎"は"恐れ"の感情とも密接な感情があるとされていますので、トラウマになるような辛い経験や強いストレスをきっかけに不眠となる方は、同様に"心"と"腎"とのバランスの乱れを生じたことに由るものと考えられます。
このように、"不眠"は、"五臓"に宿っている様々な"精神(こころ)"の働きの"相互関係(バランス)"の中で、主に"心"の臓に宿っている"神"(=心神)が"安らかに休むことが出来ているか否か"に由っていると言うことができます。
こうした観点から、針灸医学では、五臓のどこにアンバランスが生じているのかを探り、針を打つことで"滞っている"ものは"通し"、"上っている"ものは"下げ"、五臓のバランスを整えて、"心神"を安定させるよう、経絡を通じて働きかけてゆきます。
針灸で使うツボの中には、"神門"や"神庭"など"神"の名の付くツボが多くあり、針灸治療が昔から"神"="精神(こころ)"の状態の調整に活用されてきたことが分かります。
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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針灸、マッサージ、中国整体を併設