中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
長年に渡って腰と膝の痛みに悩んでいるという76歳男性の方から《日中友好新聞》の「針灸治療相談コーナー」にご相談の投稿を頂きました(2017年8月)。
何度かぎっくり腰を繰り返しており、一度は全く動けなくなって救急車で運ばれ、一週間ほど入院したこともあるようです。
1年くらい前までは時々痛くなる程度で、その他の時は痛みを感じなかったのが、最近では立ったり歩いたりしている時に常に腰の痛みがあるとのこと。ただ、椅子に座っている時はあまり気ならないとのことです。
病院では「腰椎すべり症」の診断が出ているとのことで、痛みの範囲は腰全体にあるようです。
電気マッサージや貼り薬などを試しているが改善しないとのこと。
膝に関しては、数年前とくらべると徐々に痛みは軽減傾向ではあるが、坂道を歩くときや屈伸した時などに痛みを感じるとのことです。
元々、サッカーやジョギング、山登りを行っていた方で、出来ればせめて低山歩きぐらいはできるように回復したい、ということでの相談でした。
「腰椎すべり症」の診断が出ているとのことですが、「腰椎すべり症」には「変性すべり症」と「分離すべり症」があり、「変性すべり症」の場合、腰椎そのものがすべって脊柱管を狭窄するため「脊柱管狭窄症」と同様の症状が出ます。
頂いたご相談内容からは情報(判断材料)に限りがあるのですが、「立ったり歩いたりしていると辛く、坐り姿勢では楽」というのはこの辺りに起因するのではないかと思われます。
現代医学的には既述の通り腰椎の構造的な問題が生じていることは明確のようで、こうしたことが発見できる検査技術などは現代医学の優れたところだと思います。
一方、中医学、針灸医学では、症状の現れ方から五臓六腑や経絡の病変を探って病態を把握してゆきますが、この場合どのように考えることが出来るでしょうか?
まず「立ったり歩いたりしていると辛く、坐り姿勢では楽」ということに関して、中医学では、『久しく行けば筋を傷め』、『久しく立てば骨を傷める』と言われ、長く歩いていると「筋」を傷め、更に長引けは「筋」を主っている「肝」を傷めるとされ、同様に長く立っていると「骨」に負担がかかり、更には「骨」を主っている「腎」にまで負担が及び得るとされています。
膝の痛みに関しては状態を把握するだけの情報が少ないというところが実際ですが、「坂道を歩くときや屈伸した時などに痛みを感じる」という症状の誘発要因はひとつの参考になります。中医学では"屈曲"で痛むのは「骨」の要素、"伸展"で痛むのは「筋」の要素が問題として大きいという考え方もあり、「屈伸した時に痛みがある」という症状の誘発要因からは、やはり「骨」や「筋」の問題が考えられます。
また中医学では、「腰は腎の府(府=気が集まる処)」、「膝は肝の府」とも言われ、「腰」は「腎」の状態が現れやすく、また「膝」は「肝」の状態が反映しやすい部位と言えます。
さらに、「腎」の臓は先天の気を蓄えている臓で、加齢と最も関わりのある臓とも言えるでしょう。また中医学には「久病入腎」という言葉があって、病が長引くと「腎」に影響が及ぶという考え方があります。今回のご相談者の場合、ご年齢の面からも、長年に渡って患っているということからも「腎」との関わりの大きさが推測されます。
これらのことから、今回の症状はまさにこの「腎」と「肝」が弱っていることによって「腰」や「膝」に症状が現れている状態ということが推測されます。
痛みの場所である腰椎や腰の部分には「腎経」と、その表裏関係にある「膀胱経」という経絡が通っており、膝にはやはり「肝経」、「腎経」などが通っています。
腎や肝の働きを高め、腰や膝を通る経絡の通りを良くすることで痛みの軽減を図ることは可能だと思います。
但し、腰椎に物理的・構造的な問題があることは事実で、特に運動の再開を目標としているのであれば、腰を支える筋肉の筋トレや、腰部の柔軟性や血流を良くする為のストレッチなどは不可欠でしょう。
年齢的にも、先ずはこれ以上の悪化を防止し、痛みを軽減すること。そして運動が可能な程度に痛みが軽減したら、痛みをコントロールしながらリハビリを行い、徐々に運動強度を上げて行くのが良いと思われます。
(《日中友好新聞》2017年8月5日号・第2423号に掲載の「針灸治療相談コーナー①」を加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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