中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
七九歳の男性で、足の親指の付け根が少し赤く怒張し、平常では痛みはないものの歩行時に関節に鈍痛があるという方から、痛み緩和の為にご自分でお灸を試してみたいので教えて欲しい、というご相談がありました。
この足拇趾の痛みは、整形外科では「強剛母趾」と診断されたとのことでした。
おそらく多くの方があまり聞きなれないこの「強剛母趾」という症状は、足の親趾の付け根の関節に負担がかかり続け、徐々に骨がすり減りながら、「骨棘」という「骨のとげ」が出来てしまった状態です。足の趾を動かしたり、歩行時に母趾で地面をけった時などに、この「骨のとげ」が周囲の組織を刺激して痛みが生じ、また炎症を引き起こします。骨という構造的なものに問題が生じているので、動けば痛みが出やすく、自然にはなかなか治りにくい症状です。
痛みの緩和のため、ご自分でお灸を試してみたいとのことですが、ご家庭で行う場合、基本的には痛みのある部位の周辺に疼痛部位を囲むように数か所お灸をすると良いでしょう。お灸はドラッグストアや薬局でも手軽に行えるものを販売しています。
但し、痛みの部位の熱感が強かったり、入浴(温め)で痛みが増悪するような場合には、炎症が悪化し、かえって疼く場合がありますので、ご家庭でのお灸は控えた方が良いでしょう。
ご家庭ではやはり、熱感がある場合には冷やして炎症を抑え疼痛を緩和し、そうでない場合には温めて循環を良くして症状を緩和するという基本に則るのが良いでしょう。
ただ、実際の針灸治療では、捻挫などの炎症症状に対しても敢えて灸や火針などで熱を加える場合もあります。これは"陰が極まれば陽に転じ、陽も極まれば陰に転じる"、といった陰陽の考え方から、熱を以って熱を制する、あるいは、熱を以って熱を引く、といった治療になります。
また、実際の治療では局所に対する施術のみではなく、その原因に対しても施術を行ってゆきます。
こうした関節(骨)の痛みは、中医学では「痹証」の範疇と考えることができ、また「骨」と「腎」との問題と捉えることが出来ます。
「痹証」というのは、身体の「虚」(弱っているところ)に乗じて外から「邪」が入り込み、関節などの痛みや動作の不具合を生じるものを言います。寒気(冷え)が入り込んだのか、湿気が入り込んだのか、熱が張り込んだのか、など、入り込んだ「邪」の種類によって痛みの出方が違ってきます。
また中医学では「骨」は「腎」が主(つかさど)っており、「腎」は成長・発育・老化に大きく関わる臓でもあります。ご相談者の七九歳という年齢からもこの「腎」の衰えとともに「骨」にも影響が出、そこに外部からの影響も加わって今回の症状が出たと考えられます。
お灸による局所のケアだけで改善が見られない場合には、「腎」を補ったり、入り込んだ「邪」を取り除き、「邪」によって滞った気血の流れを良くするような施術も行うと良いでしょう。
(《日中友好新聞》2017年12月5日号・第2434号に掲載の「針灸治療相談コーナー⑤」を加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
針灸、マッサージ、中国整体を併設