中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
以前からあった軽度のアレルギー性鼻炎が今年になってから、日中はほとんど症状がないものの、夜間、就寝後2時間くらいすると症状がひどく出て来て睡眠に支障がある、という方がいらっしゃいました。この方は鼻炎と同時にご家族の介護と家事の疲れが蓄積し、自律神経の変調もきたしているとのことでした。
以前、「眼」は「肝の竅」というお話しを紹介しましたが、中医学では「鼻」は「肺の竅」と言われ、鼻の症状は「肺」の臓と大きな関係があるとされます。
また「肺」は「衛気」という身体の表面を"防衛"している気と関係が深く、また「肺は皮毛を主(つかさど)る」とも言われ、外部からの刺激に対する"体表面での防御作用"と深く関わっています。
外部からの刺激に対し過剰反応をおこしてしまう「アレルギー」ということと、「鼻」は「肺の竅」であるということのいずれからも、アレルギー性鼻炎という症状が中医学的には「肺」という臓が大きく関わっていることが分かります。
この方の場合、この"体表面での防御作用"の働きが不十分である原因は、「肺」の問題の他に"気の循環リズム"をコントロールする働き=「気機」の乱れも症状悪化の要因として考えられます。「気機の乱れ」は、現代的に言えば"ストレス"や"自律神経の乱れ"と考えて良いと思います。
中医学においてこの「気機」="気の循環リズム"をコントロールしている主な臓は「肝」ですが、この方の場合、ご家族の介護と家事の疲れやストレスなどの蓄積が「肝」に影響を与え、気機の乱れを引き起こしたと考えられます。
このように中医学的には、"アレルギー性鼻炎"という「鼻」の症状にも、「肺」、「肝」という二つの臓が関わっていることが考えられます。
また、"軽度だった症状が今年になってから夜間に症状が強く出るようになった"ことに関しても、この「肺」、「肝」ふたつの臓の関係性と、今度は"臓腑(経絡)"と"時間帯"との関係が考えられます。
中医学では"臓腑・経絡"と"時間帯"との関係性が説かれていて(「子午流注」といいます)、各々の臓腑経絡が影響を受けやすい時間帯(語弊はありますが臓腑経絡が活発に働く時間帯)というものがあります。各時間帯に対応する臓腑経絡がその時間帯にしっかりとその働きを果たし、次の時間帯に対応する臓腑経絡にその役割をバトンタッチしてゆくことで全身の機能はバランスが保たれます。
この考え方からみると、深夜から明け方にかけての時間帯は、"気機"に関係する「肝」の臓から"衛気"と関係する「肺」の臓へと、その主な活動が移行する時刻です。これらの臓腑経絡が弱っているとその対応する時間帯に症状が出現、もしくは悪化する可能性が考えられます。
夜間、就寝後2時間くらいすると症状がひどくなるというのは、「肺」と「肝」が十分に働けておらず、その対応する時間帯になって症状が悪化しているとも考えられます。
このように針灸医学では、五官(ここでは"鼻")の症状ひとつ診るのにも、症状のある部位だけでなく、それと関わる臓腑、経絡、時には臓腑経絡と時間帯との関係まで、様々な関係性の中で部分を見ているという面白さがあります。
(《日中友好新聞》2018年1月5日号・第2436号に掲載の「針灸治療相談コーナー⑥」を加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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