中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
ご自身では"難聴の自覚は無かった"ものの、"耳鳴"がひどくなって受診した病院で2年程前に「突発性難聴」と診断された、というご相談がありました。
受診のきっかけとなった"耳鳴"に関してはもちろん"自覚"がありますが、セカンドオピニオンでも"難聴"に関しては明確な結論は出ていないようでした。
たまたまご覧醫なった健康番組をきっかけにご自身で色々と調べられた結果「ストレートネック」でも「耳鳴・難聴」が生じ得ることを知り、自身の耳鳴も「ストレートネック」が原因ではないかと疑われていました。
ここで一つ注意しなくてはならないのが、ある病気(あるいは原因)「A」があった場合に、そこから「a、b、c、d...」様々な症状が出る"可能性"がありますが、逆にその内の「b」或いは「c」と言った症状があった場合に、必ずしもその原因が「A」であるとは限らない、ということです(他の原因から生じているかも知れない)。
ただ、可能性は様々にありますので、今の時代、診断結果や治療方針に納得がゆかない場合は、セカンドオピニオン、サードオピニオンを受診したり、他の診療科目を受診したり、あるいはまたご自身でも色々と情報を集めることは大切、且つ必要なことだと思います。ただ、情報過多の中、一面的な情報に振り回されないようにすることもまた注意したい点です。
針灸医学の場合、病気を診る時には、主たる症状の事細かな状況や、その主症状が増悪、或いは軽減する要素などはもちろん、主症状に伴う他の症状(随伴症状)や、更には発症に至る経緯や発症の誘因(と思われる日常生活や仕事の状況)などの様々な情報から、患者さんが不調に至った一つの"ストーリー"を描き、その結果患者さんの身体の中で何が起こっているのかを"想像"します。
今回の場合、お伝え頂いた経緯や随伴症状を見ると(ここではすべてを詳しくは紹介できませんが)、3年前(発症の1年前)から仕事上でそれまで無かった慣れないPC作業が毎日約10時間にも及んで続いたことや、それに伴って"ふらつき、肩こり、眼の疲れ、頭痛"といった症状が出現し、それが慢性化して辛くなっていたこと、その後"耳鳴"が出現したこと("難聴"は自覚がない)、などを併せて考えると、中医学的には、多忙による"気血の損耗"が続いた上にストレスによる"気の停滞"を引き起こし、その結果発生した"肝火(肝の気滞によって生じた火)"が耳に影響したと考えられます。
停滞鬱積は長引くと熱化(鬱熱)しやすく、熱はまた上昇する性質があるので身体上部に影響を与え易い上に、液体成分である血液の消耗が激しいと"火"を抑える"水"の働きも弱くなります。また、消耗して量が少なくなると水量の少ない川のように流れもまた悪くなり停滞し易くなります。
この方は、5年前にもひどい"めまい"で病院を受診した経緯があり(その時は耳鼻科で異常なしの診断だったとのこと)、耳鳴り発症の前段階(一年前)から、"ふらつき、肩こり、眼の疲れ、頭痛"といった症状が慢性化していたようですので、耳鳴り発症以前から既に、気血を損耗して頭部(身体上部)に気血が行き届きにくくなったり、気血が停滞していたり、あるいは停滞鬱積して生じた熱が上部に昇りやすい状態になっていたと考えられます。
原因として疑われている「ストレートネック」については、整形外科などでレントゲンを撮ればすぐに診断がつきますが、すでに述べた通り、今回の"耳鳴"との因果関係については、頂いた情報だけからは何とも言えないところで、針灸の観点からは、既述のような"ストーリー"と身体の中の気血の状況が"想像"できることになります。
こういった場合、治療としては先ず"気血を補い"ながら同時に"停滞した気の巡りを良く"することを考えます。もちろん、患者さん自身が十分な休息を取りリラックスすることも大切な治療の一要素となります。
(《日中友好新聞》2018年7月5日号・第2452号に掲載の「針灸治療相談コーナー⑩」を加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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