中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
六九才男性で8年ほど前から文字を書く際に手が震えて書けなくなり、「本態性振戦」と診断されたとのご相談がありました。
「本態性振戦(しんせん)」は、字を書く以外にも、お箸を使ったりコップを持ったり、姿勢を維持したり、と、"何か動作をする"際に"ふるえ(振戦)"が出現し、ふるえは"精神的緊張"で強くなるのが特徴です。主に"手"や"頭"、"声"に"ふるえ"が現れ、下肢などには症状は表れません。また症状は"ふるえ"のみです。
似たような症状を呈するものに「パーキンソン病」がありますが、こちらの場合は、"何かをしようとした時"ではなく、逆に、主に"安静時"に、しかも"手・足の両方"にふるえが出現し、また"ふるえ以外にも様々な症状"が現れるもので、「本態性振戦」とは異なります。
ご相談者の場合、「発症の一年前に仕事を退職」され、「その半年後(発症の半年前)から母親の介護が続いている」という背景があるようですが、中医学的には、こうした"環境の変化"や"精神的な(肉体的にも)負担"なども今回の症状に関連があるのではないかと考慮に入れます。
主訴を中心に見ると、中医学では、「ふるえ」が生じる原因としては、「風邪(ふうじゃ)」や「冷え」、「気血不足(特に血虚)」などが考えられ、また臓腑の問題としては「肝腎不足」などが考えられます。
自然界で風が吹けば物が揺れるように、身体の中でも「風」が生じると、風が生じた部分の身体が揺れたり震えたりすると考えます。身体の中で「風」が生じる原因には様々ありますが、五臓の中では「肝」の臓が関わりが強いとされて、様々なストレスが誘因となることがあります。
また、冷えやその他の要因で気血の流れが悪くなると、気血が充分に行き届かない身体の部分は正常な動きを失します。「肝」や「腎」といった臓はこうした気血の状態に深く関っています。
「本態性振戦」の場合には"精神的緊張"が強く関わる(誘発要因となる)ことから、上記以外に「神(精神・こころ)」の関わりと、「神」を蔵している「心」の臓との関わりも考えられます(心の経絡はちょうど手(上肢)を走行してもいます)。
先の「肝腎」との関係で言えば、「心」と「腎」とは各々人体の"上と下"、"火と水(陽と陰)"といった関係性があり、また「心」と「肝」も共に"血"に関わる臓として密接に関係していて(「心」は血の生成や循環、「肝」は血のストックと循環量の調整などに関わる)、「心神」を中心に見ても、「肝腎」は密接に関係しています。
"緊張した時の手(上肢)の震え"という症状を"身体の中に生じた「風」"と考え、その風の発生を"こころ"や"臓腑"との関連の中で診てゆくところが、中医学の身体の診方の面白いところではないでしょうか。
(《日中友好新聞》2019年1月5日号に掲載の「針灸治療相談コーナー」を加筆訂正)
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