中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
二十年以上フラメンコを習っているという73歳の女性から、「フラメンコの稽古の後の夜中」に、向う脛や大腿内側が所謂「こむら返り」を起こして激しく痛むとのご相談がありました。
所謂「こむら返り」は、主に"ふくらはぎ(こむら=ふくらはぎ)"の筋肉が急に収縮、痙攣を起こして痛みを発する状態ですが、ご相談者の様にふくらはぎ以外の部位でも当然起こり得る症状で、大腿部などの比較的大きな筋肉ではその痛みもまた激しいものがあります。
「こむら返り」が起こる原因は様々ですが、「フラメンコの稽古の後の夜中」に起きるという今回の様なケースの場合、現代医学的には、運動による筋肉疲労と、発汗によって水分と共にカルシウム、マグネシウムなどのミネラルが不足した状態になっているところに、夜間の体温低下による冷え(とそれに伴う血行不良)などが筋肉の収縮、痙攣を引き起こす引き金になっていると考えられます。
或いは御高齢者の場合、加齢に伴った"筋肉量の減少"に由る"血行不良(冷え)"や"脱水傾向"などが筋痙攣を発症しやすくする原因となる場合もあります。
ご相談者の場合は、もう二十年以上もフラメンコを続けていらっしゃるので、ある程度の筋肉は維持されていると思われますが、それでも年齢に伴う筋肉量の減少はあるかも知れません。若いときと同じように稽古をしていると稽古の強度や量が、今のお身体の状態に対してオーバーワーク気味である可能性も考えられます。フラメンコの稽古の強度や量を調節することも、こむら返りの予防としては有効かも知れません。或いは逆に、フラメンコの稽古とは別の場面で"筋トレ"を行うこともまた、フラメンコの稽古の"補助トレーニング"として有効かも知れません。
中医学の古典には、「カルシウム、マグネシウムなどのミネラル」といった概念はありませんが、こうした症状は、やはり、主に「血(流)の不足」と「冷え」を考えます。
「血(流)の不足」は"筋肉の潤い不足"や"冷え"を招きますし、「寒邪」には"冷え"と共に「収引」という作用があるので、筋肉を引き攣らせます。
ご相談者は「子供の頃からプールで度々足が攣っていた」とのことですので、元々体質的な身体の「冷え」と「血(流)不足」の傾向があったところに、加齢の要因と、運動によって筋肉中の血を消耗したことに由る「血(流)不足」=「冷え」と、夜間の冷え=「寒邪」とが重なることで、「稽古後の夜中」に「こむら返り」を発症し易くなっているのだと考えられます。
ここで、ご相談者が「子供の頃からプールで度々足が攣っていた」と言っている様に、「特に何をした訳でもない」のに、「元々"攣りやすい"」という人もいます。
こうした方は、やはり、体質的な「血(流)の不足」と「冷え」がある可能性があるので、身体を冷やさないように気を付けると共に、筋肉への血流を良くして筋肉が血液で潤い柔軟性を保っておけるように「適度な運動」を行うことは有効です。
ご相談者の場合は「運動」が誘因の一つとなっているようですが、決して「運動が悪い」訳ではありません。あくまで各自の身体の状態(と目的)に対する運動の"強度"や"量"と"内容(方法)"が大切です。
現代社会では、「運動不足」に由る"血行不良"や"筋肉量の不足"が、"冷え"や筋肉中の"脱水傾向"などを招いている場合も多く見られる様に思います。
中国の古い"養生"の言葉の中に、「戸枢朽ちず、流水腐らず。動けばなり。形もまたしかり。」といったものがあります。
「戸の枢(くるる=蝶番)や流水は、動いたり流れたりしていれば朽ちない(錆びない)し腐らないが、動かなかったり、流れずに滞っていれば、朽ちたり(錆び付いたり)腐ったりする。形ある身体もまたそうである。」という意味です。つまり「適度に動いていましょうI」ということですね。
「こむら返り」が生じる原因は人それぞれに異なり、その人の体質や生活習慣、運動習慣によっても異なりますので、各々に応じた対処が必要ですが、「こむら返り」に限らず、健康を保つ為には、「適度な運動」によって、一定の筋肉を保ち、身体の血流を良くしておくことが大切なのは、洋の東西を問わず、また時代を問わず、変わらない認識であることは間違いないようです。
ちなみに話は少し逸れますが、上述中に"筋肉量の減少"に由る"脱水傾向"ということを述べていますが、摂取した水分を適度に身体に保っておく力は筋肉量に比例するとも言われます。
せっせと水を飲んでいても、筋肉が少ないと身体に水分を保持できにくく脱水を起こしやすいのです。
また適度に発汗する習慣がないと、休汗腺(その働きがお休みモードに入っている汗腺)が増え、いざと言う時に上手く発汗して体温調整が出来ないとも言われています。
これから「熱中症」が増えて来る時期ですが、今回例に挙げた「筋肉の攣り」だけでなく、「熱中症」の予防の為にも、平素から"適度に発汗"する程度の「適度な運動」を行って"筋肉を維持"しておくことは大切なことのようです。
過不足無く、各々自分に合った必要な運動量を見つけて継続することが大切ですね。
(《日中友好新聞》2019年4月5日号に掲載の「針灸治療相談コーナー⑰」を大幅に加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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