中国針灸「精誠堂(せいせいどう)」【千歳烏山 本院】東京都世田谷区南烏山5-9-2 【飯田橋針灸マッサージ治療院】東京都千代田区富士見2-2-3 ドーム飯田橋1F
数か月前に電動刈込機での作業を2時間ほど行った2日後から右肩が痛くなり、自己流で肩を揉んだところ腫れてしまい、以後、夜痛くて眠れないという七十五歳・男性からのご相談がありました。
状況的には、所謂「肩関節周囲炎」だと思われます。
ご相談者の場合、七十五歳という年齢的要素に、電動草刈機の震動や重さ、作業による疲労などが肩への負担となり、肩関節周囲炎を引き起こしたと思われます。そこに加え、局所に炎症が生じているにも拘らず、良かれと思って自己流で揉んだことでかえって炎症が酷くなって腫れたと思われます。痛みが強いと(もしくは痛みが長引くと)痛みをかばって動かさなくなり、動かさないことで肩の可動制限がすすんでしまい、日常生活に支障が出る程"肩が挙がらなく"なります。所謂"広義"での「四十肩・五十肩」といった状態です。
所謂「四十肩・五十肩」との診断を承けて当院にご来院された方の中には、
「ジムの筋トレで肩に負担をかけて痛め、良かれと思ってそのままトレーニングを続けていたら、数か月したある日、急に肩が挙がらなくなった」とか、
「格闘技を行っていて肩を傷め、これまでにも度々痛めては自然と治るということを繰り返してきたので、今回も同じ様に治ると思っていたら、徐々に可動制限が進んで肩が挙がらなくなった」とか、
或いはまた、「仕事で重いものを運んでいて、以前から少し違和感は感じてはいたものの、ある日、持ち上げた瞬間に肩に激痛が走り、その瞬間から肩が挙がらなくなった」
...などなど、様々な患者さんがいらっしゃいます。
中には、"特に何も思い当たるきっかけが無い"のに、
「ある日、朝目覚めたら肩に痛みを覚え、肩が挙がらなくなっていた」とか、
「朝方、肩の激痛で目が覚め、起きたら肩が挙がらなくなっていた(前日夜まで何とも無かった)」
「夜遅くに突然肩に痛みを覚え、そのまま就寝したら、朝起きて肩が挙がらなくなっていた」
...といった様に、特に何の前触れもなく、ある日突然、"痛み"と共に"肩が動かなくなる"という方も多くいらっしゃいます。
「肩に痛みがあって、肩が挙がらない」(肩関節周囲の痛みと運動障害)といった一見同じ様な状態でも、実は「腱板断裂」や「石灰性腱炎」といった様なものから「変形性肩関節症」、その他「内臓からの関連痛」などといったものまで、実に様々な可能性(病態)が存在します。
上に挙げた幾つかの例の中には、実はこうした鑑別診断がつくものもあると思われます。
狭い意味での所謂「四十肩・五十肩」というのは、上記の様な「肩関節周囲の疾患」が"鑑別除外"され、"特に明らかな原因が無く、肩関節周囲の痛みと運動障害を引き起こしている状態(症状)"を指して言います(原因や引き鉄はあるのでしょうが、上記に示した様な「肩関節周囲の疾患」であると鑑別診断される様な"明確な所見"が見当たらない、ということ)。
発症の引き鉄(≒原因)となる事柄があっても、検査の結果、上記の様な明確な「肩関節周囲の疾患」に当てはまらない場合も、広い意味での「四十肩・五十肩」と診断される場合もあります。
長々と説明した挙句に、今回は何を言いたいのかと言いますと、「同じような場所に同じような痛み」があり、「同じような可動制限(運動障害)」が見られる、一見「同じ様な症状」であっても、その内部で生じている状態(病態)は人それぞれで、その重症度もまた異なり、それ故に、治って行く経過もまた病態と重症度に応じて人それぞれである、ということです。
これは例として上述した「肩の症状(四十肩・五十肩)」に限らず、例えば一口で「腰痛」、或いは「膝の痛み」といった場合もまた同様である、ということです。
再び、上述した所謂「四十肩・五十肩」を例に挙げて言うと、
中医学では、こうした症状は「漏肩風」と呼ばれ、気血が虚弱となっていたり筋骨が衰退しているところに、肩の局所に風寒湿の邪が侵入したり、或いは肩の使い過ぎや持続的な肩への負担が加わることで、肩局所の気血が滞り、鬱滞して熱を生じ、痛みや可動制限を生じると考えます。
したがって、理屈としては、肩局所に滞った気血の流れを良くしてあげれば良い、ということになり、針灸治療では、肩の局所と共に、肩を通る経絡上にある、しかし肩からは離れた場所(例えば向う脛)にある"ツボ"に針を刺して痛みの改善や可動域の改善を図ろうとします。
が、実は、これもまた患者さん各々の状態によって一筋縄ではいかないものがあります。
ここでまた一つ言いたいことは、"同じような症状の有る或る人"に"良く効いた治療方法"が、"同じような症状の有る別の人"にもまた"同じ様に良く効くとは限らない"、ということです。
これもまた「肩の症状」に限らず、その他の様々な症状に対しても同様です。
しかし、ひとつ言えることは、先に列挙したような肩疾患の場合、(実際に当院で針を受診された方の例に限ってですが)受傷(発症)後すぐ(数日内)に来院されて施術を行った場合、早期の内に疼痛の軽減と共に可動域の改善が見られ、長引かずにほぼ緩解に至った例も多いのですが、受傷(発症)から時間が経ってしまい、顕著な可動制限が生じて(つまり"肩が挙がらない"、"固まってしまった"という状況になって)から一ヶ月~数か月という時間を経過してご来院されたケースですと、施術を行ってもなかなか目に見えた改善が現れないのも確かです。
総じて最後に言いたいことは、(どのような症状にも言えることかも知れませんが)"痛み"や"運動障害(可動制限)"が出た場合には、"早期にきちんとした診断・鑑別"を行い、"必要に応じた適切な処置、治療"を開始すること(場合に由っては一旦"経過観察"や"保存療法"を行い、経過を見て再度鑑別診断すること)が大切だということです。
(《日中友好新聞》2019年5月5日号に掲載の「針灸治療相談コーナー⑱」を基に大幅に加筆訂正)
賀偉総院長が施術を行う本格中国針灸の専門治療院
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針灸、マッサージ、中国整体を併設