「カラダに悪いことをしない」という「健康法」

　今、巷にはあらゆる健康情報、健康法が溢れています。

　これを食べると良い、あれを飲めば良い、これをすれば良い。
　カラダに「良い」とされる様々な方法が目に付きます。
　多忙な現代人のために短時間で手軽に取り入れられ、且つ効果抜群とされる食品や補助食品、運動法や運動器具、更には運動の代わりになる（運動したのと同じ効果がある）とされる健康器具まで、ありとあらゆるものが目に付きます。

　そういった物や方法を否定しようと言うのではありません。
　そういった物や方法で一定の効果が出る人（出た人）もいるでしょう。
　多忙な現代人が、限られた条件の中で、「より効率的に効果を出す」為には有効かもしれませんし、また、「やらないよりはやった方が良い」というのも確かでしょう。

　ただ、ちょっと考えてみてください。
　「これさえやっていれば（食べてれば／飲んでれば）大丈夫」というものが本当にあったら、誰も身体の不調に悩む人はいません。
 　もちろん「やらないよりはやった方が良い」のは確かですが、しかしやはり「やらないよりはやった方が良い」程度のものであって、「これさえやっていれば（食べてれば／飲んでれば）」健康が得られる、しかも「無理が効く強靭な健康体」が手に入る、ということではないことに先ず注意をしたいと思います。
　そして、様々な物や方法は万人に共通ではなく、ある人には効果があっても、必ずしも他の人にも同様の効果があるとは限らず、場合に由っては却って逆効果の場合もあることを注意しなくてはなりません。

　とは言え、やはり健康に良いとされることは（ご自分なりに研究・工夫してご自分に合ったものを）積極的に取り入れて頂きたいのですが、今回一番お伝えしたいことは、健康に良い（とされる）ことをしている一方で、それを打ち消す様な、場合に由ってはそれ以上に「健康に悪いこと」をしていることが非常に多いことに注意を注いで頂きたい、ということです。

　例えば...；

• 食欲不振で食少、胃腸の具合も悪いため、三度の食事は内容に気を付け、身体に良いとされるものは出来るだけ摂るようにしている、と言いながら、一方では絶え間なく間食に手が伸びており、相当量の"間食"は食べた内にカウントしていない。
• 〇〇の吸収を抑える、□□の燃焼を助ける、といったサプリや健康食品、健康番組で紹介された△△臓に良いとされる食材を積極的に摂ってはいるが、それで安心してしまい、それ以上の量の○○や、燃焼し切れないほどの□□を食べ、△△臓に負担を掛ける食材を過剰に摂っている。
• 通勤時に意識して歩いている、階段を使っている、週に一日はジムに...。しかしその一方で、それ以外の時間はほとんど身体を動かすことなく、一日中、不良姿勢でスマホやタブレット、テレビやパソコンに釘付けになっている。或いは、運動効果のある器具を使っているからと安心し、それ以外に自ら身体を動かすことはしていない。
• 出来るだけ水分を摂った方が良いとの情報の下、出来るだけ、しかもカラダに良いとされる"水"を多く摂取しているのは良いとして、「キンキンに冷えていないと飲んだ気がしない」といって冷たいものを摂り過ぎている。或いは、"カラダに良い水"以外に、"カラダにあまり良くない飲み物"の摂取もそれ以上に多い。
• 自律神経が乱れているので、それに効くお茶やサプリを飲んだり、呼吸法をしてみたりするのは良いことだが、その一方で、就寝時には布団の中でスマホに夢中になり、夜更かしして睡眠不足をし、生活リズムも乱れている。

　...などなど。

　こうした多くの場合では、実は患者さん自身も何となく「良くないことをしているんだろうな」との自覚があることが多く、最初からは自己申告されません。施術を重ね、お話しを重ねる中で問題点が発覚する場合が多くあります。患者さん自身も「良くないことをしている」自覚があるからこそ、それを「帳消し」にする為に「カラダに良いこと」を取り入れようとしているのでしょうが、結局は、良くてプラス・マイナス・ゼロ、多くの場合はやはりマイナスです。
　もちろん、患者さん自身無自覚で、それほど健康に悪いことだとは思っていない場合もあります。その場合は私の分かる範囲で何故悪いのかをご説明させて頂くこともあります。

　「（何々を）しない」というと窮屈で、様々なことを我慢し、まるで修行僧のような生活を送らねばならないのかと、苦しい事の様に感じるかも知れませんが、そうではありません。
　折角行っている「健康に良い事」の効果を帳消しにし、ご自身の身体に負担を掛けている幾つかの習慣を少し「控えて」みる、というだけのことです。しかもその内容は、節度ある食事、適度な運動、十分な睡眠（休息）、規則正しい生活リズムといった当たり前のことを心がけるということです。

　施術にいらして頂くのは、針を打つ、灸をする、その他何かの施術を行う、ということ以外に、こうしたことに気付いて頂く、再認識して頂く、ということも私たちがお役に立てることの一つだと考えています。

　氾濫する様々な「健康に良い」とされる情報にアンテナを張る一方で、少しだけ「健康に悪いこと」を減らす様、生活習慣を見直してみるのはいかがでしょうか？
　少しでもそのお手伝いが出来れば幸いです。